FEVER西村_Offshore山本 002

アジアで広がる、音楽関係者が集まる会議

西村:山本さんがイベントや招聘をやらなくなったのはどういう理由ですか?

山本:私はやらない方がいいですよ。責任取れない(笑)。自分のモチベーションが向かないということもあるけど、やっぱり、海外のバンドメンバーのビザは個人招聘では取れないから、今は日本では「やってはダメ」だという全体の認識。個人で責任持って来日して、何があっても責任持って帰っていくだけの少人数、小規模ライブでいい音楽家なら、オーガナイズは手伝います。大々的にやるのは無理ですね。あと、自分で企画せず、イベント企画を専門にやっている人に振った方が面白くなると思う。

西村:イベントをやりたがる人が今後増える気もするんですよね。お店にいると、その時代その時代のイベントやるキーマンみたいな人が出てくるんです。面白いことを考えてて、たまに話すといいヒントをもらえたり。山本さんも、初めて会ってから、会う度に面白いこと考えてるなあと思ってたし。今、タイにたくさん行ってdessin the world(※3)のジンさんと仲良くさせてもらってるけど、その前は山本さんがDesktop Errorの話(※4)を持ってきてくれてたりするから。

※3 タイ在住のジン氏が運営するレーベル。https://www.facebook.com/dessin.the.world

※4 バンコクを拠点に活動するバンド。Offshore山本が2013年に来日ツアーをプロデュース。東京でのライブはFEVERで開催した。 https://offshore-mcc.net/news/374/

山本:無謀でしたよね、あの時。

西村:「楽屋泊まれないですか?」って山本さんに言われて、「あーどうしよっかな」って思いました(笑)。

山本:そんなこと言ったんだ(笑)!

西村:最近タイでは、TWO MILLION THANKSも復活してますよね。

山本:そうそう、MV公開されてましたね。もうわけわからないですよね、あの感じ。さすが。

西村:タイに行った時、何かのイベントでskillkillsのTシャツ着てる人がいたんです。タイで、skillkillsのTシャツ着てるが人いる?!そんなバカな?!と思ったら、TWO MILLION THANKSのボーカルでした。

山本:(笑)。日本で共演したskillkillsの音楽聴いて、すごい!って思ったんだと思います。打ち上げでもskillkillsがとても良くしてくれたし。でも、日本人の感覚からすると、ああいうポップな音楽やってる人が、skillkillsのあのドープな音楽と、繋がらないじゃないですか。TWO MILLION THANKSは、いろんな音楽を聴いて吸収してるんだな、と感心しました。あの音楽性、謎なんですよね。

西村:実は11月にタイに3回行くことになってます。まず、アート系ショップでありカルチャーメディアでもあるhappeningが主催する、『happening@house』。KEISHI TANAKAを推薦して、彼のライブのサポートで一緒に行ってきます。その次の週は、アジアと欧米からインディーバンドが集まるフェス『MAHORASOP FESTIVAL』に、Lucie,Tooが出演するので帯同します。最後は11月3週目、毎年恒例のフェス『CAT EXPO』。FIVE NEW OLDとcinema staffの2つが出演することになり、こちらもFEVERがサポートしています。『MAHORASOP FESTIVAL』は、タイにこれまでなかったことに挑戦してて、アジア含めた世界各地と、タイからインディーバンドを集めたフェスのようです。

山本:SXSWのようなイメージもあるんでしょうか?タイでも、国際的な音楽ミーティングが始まりそうなのかもしれませんね。

西村:こないだ、博多でそういった会議があったんです。『FUKUOKA ASIAN PICKS』 https://asianpicks.jp というイベントで、博多をアジアのハブにして、音楽交流していこう、という。 イベンターの方が集まってトークをしたり、アジアのバンドが招聘されて博多でライブしていました。

n_y004.jpg山本:音楽関係者の国際会議、実は沖縄でもやってるんですよ。今アジアで音楽の国際会議はいろんなところで頻繁に起こってます。沖縄では年に一度、『Trans Asia Music Meeting』という名前で開催していて、私が働いていた文化系の財団で支援していました。ただ、沖縄を主体として考えた時に、どうも広がりづらさがあるような気はしています。沖縄って、みんな仕事しながら、この島に住み、音楽を続けていく、無理のないバランスがすごく大切。ちょうど良いバランスでやりたい人は、ガンガン売り込みに行けないんですよね。SXSWや、ああいう音楽見本市って、自分でどう営業するかっていうのが大事じゃないですか。そもそも、日本の人が営業下手っていうところもあるかもしれないし。

西村:それはありますね。

山本:今中国では毎年一回、『Sound of the Xity』という音楽見本市がある。韓国では、『ZANDARI』というフェスティバルがちょうど来週、ソウル市のホンデで開催されます。音楽ライブのサーキットイベントでありながら、プロモーターや音楽関係者が集まって会議もする。日本でも、そういう会議、もうちょっと起こってもいいんじゃないかと思うんです。私は、日本の音楽関係者が、国際会議に参加した方がいいんじゃないかなと思うんですよね。音楽関係者が集まるとなると、東京の人たちが中心になるとは思うんですけど。

西村:最近大阪のほうが回遊イベントはしっかりやってるような印象です。アメ村とか、やりやすいみたいで。下北沢のライブハウスは、ブッキングも先々まで決まってしまっていて、やりづらいみたいです。

山本:ライブを見れるか見れないかはどっちでもいいと私は思っていて、それよりは、音楽関係者たちが集まって話をする機会を、増やすべきだと思ってるんです。例えば今、やっと「Spotify使ってみたらよかった」みたいな話題が多いじゃないですか。バンドがインタビューで「サブスクだとどこの地域で聞かれてるかわかる」って言ってたり。ここまでサブスク浸透するのにかなり時間かかった。「いつ日本でSpotify使えるようになるんだ?」っていう数年間があって、のちに、Spotify使えるようになったけれども殆どの人がなかなか使わない数年間があって。今、やっとバンド自身が「Spotify良い」って評価する時期が来た。ここまで、海外と比べてとても時間がかかってます。日本の音楽シーンのガラパゴス化が、どれほどガラパゴスなのか?っていうのを、こういった音楽関係者による会議で、理解しておいた方が良いんじゃないかなと思うんです。観客は理解しなくてもいいんだけど。

西村:意味合いをもたせて続けていって、話のトピックによっては、一般の方も見に来れたりして。そういうのも面白いですよね。年に一回FEVERで、行政書士でもあるLITEの武田信幸くんが、補助金の申請方法や、バンドマンにいまいち馴染みのない確定申告とかをレクチャーしています。公民館でやるとちょっとジメッとしちゃうんだけど、ライブハウスでやると参加者も居心地がいいみたいです。なんだかんだ数年間続けてやってくれてますね。そういうイメージで、音楽関係者が集まる会議をできると面白いかもしれない。

山本:「やっぱり自分のやり方ではない」っていう選択(Spotify等を選ばない)は良いと思うんですけど、最低限の情報共有をする場がないといけないんじゃないかなと。ガラパゴスさを知る場所。隣の中国の音楽業界がこれだけ外に開いてて、音楽業界のなかで広告収入がこれだけあって、どれぐらいのお金が今の中国の音楽業界で動いているか。というのを、実際に中にいる人から聞いてリアルに感じられるような、コミュニケーションの場があるかないかで、今後の日本の音楽シーンも変わってくるんじゃないかなと思うんです。いや~、誰かやんないかな。誰か、って言うか、これは規模が大きくなるので、法人か、行政が立ち上げるしかないんだけど。

n_y004b.jpg西村:博多での『FUKUOKA ASIAN PICKS』の中では、スペースシャワーTVの会長、清水英明さんが、日本の音楽が海外に開かれていないことに対して言及されていたらしいんですね。そういう話をもっと広げて話し合っていけるような場があると。博多でのそのイベントは、まだ全国に広がってない。もうちょっとどの部分かに特化して続けてもらうと、面白くなってくる気はします。

山本:まあ、沖縄で実際にもうやってるから、東京の人に「沖縄に来たら?」とも思うんですけどね。

西村:アンテナ高い人は覗きに来たりとかしてるんですかね?

山本:一部の音楽関係者は何度も参加しています。寺尾ブッタさんも、来てますね。こういった場が発展していけば、寺尾ブッタさんがもうちょっと楽できたりするのかなとか思うんですよね。今、日本の音楽関係者、中国や台湾で何が起こってるのかわかんなくてひたすら寺尾ブッタさんに仕事を振りまくっている状況。寺尾さんが自身の仕事について話すだけで面白いはずです。寺尾さんの仕事のオープンソース化と言うか(笑)。


西村:そういう会議がすでに始まってて、寺尾さんも既に参加してたんですね。自分も頑張ってアンテナ張って開くようにしようと思ってるんですが、まだ開けてなかったのかも。

山本:ただ、この沖縄の会議は、まだまだ宣伝が行き渡ってないと思います。東京まであまり伝わってない。

西村:実はFEVERは宣伝が下手なんです。でも出演するバンド側が頑張ってくれるから、そのおかげでFEVERが助かってる。それを逆転させて、FEVERがきちんと宣伝行き渡らせて、バンドがそれに乗っかってくれる、っていう風にしたいんですけどね。今のところ、「アジアに行きたい」っていうバンドのバックアップをする、っていうようなリターンぐらいしかできてない。FEVERが何かアジアに向けてやってる、っていうのはみんななんとなく知ってくれてるとは思うんですけど、寺尾ブッタさんがやってることとはまだ雲泥の差があるので。

山本:寺尾ブッタさんは異常ですよね。

西村:家帰ってるのかな、あの人(笑)。ブッタさんともまたゆっくり話したいし、ブッタさんと山本さんと3人で話したらまた面白そう。

山本:それ、東京とかじゃなくて、アジアのどこかでやりたいですよね。

西村:それこそ中国でもいいかもしれない。俺は中国のイメージがまだまだアップデートされてないんです。中国って閉ざされてるイメージがあったんですけど。

山本:楽しいですよ。

西村:次に「FEVERのインタビューが更新されてない」ってウェブ班に突っ込まれたら、「いや、良いネタあるんだよ」って言って、ブッタさんと山本さんと中国で座談会行きましょうか。

山本:無駄に中国の奥地行ったりしてね。

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