ATATA05
ずっと変化球ばっかり投げてきたから、ファーストアルバムだけは、ちゃんとやりたかった(奈部川)。
■ 『TATAT』『ATATA』『9 SONGS LP』の違いについて
奈部川:配信アルバム『TATAT』、ファーストアルバム『ATATA』、12インチレコード『9 SONGS LP』って、収録曲やバージョンが少しずつ違うと思うんだけど?
阿相:配信版の『TATAT』とアルバム『ATATA』の違いは、『Ontologie』の始まり方が違うのと、実はオケと歌のバランスを若干変えてます。でも分かりづらいすね...。歌を埋もれさせるか、少し前に出すかで最後まで意見が別れてたんで。『Fury Of The Year』も各音のバランスがちょっとだけ違くしてある。あとは『Recito』。あれは先行の配信版が完成した後に再度ミックスし直したから違うやつ。もちろん『Brass And Nickel』はSTERUSSが入ったスペシャルバージョンとオリジナルのバージョンで。
鳥居:『Star Soldier』はチェロ入って化けたよね。
阿相:あれは化けた!
鳥居:ナベさんの歌も化けたし。
奈部川:もともと『Star Soldier』は、年末にプリプロを録った段階で、イントロを長くして、チェロが入るバージョンっていうのが頭にあったの。それがとても良くなると思ってたの。なんだけど、原曲のままでもすでにいいって思ったから、アルバム録るときに1番いいバージョンで録ろうと思って。
阿相:ていうか『Star Soldier』に関しては、プリプロ録った時は無料配信する予定なんてなかったからね。もともと、ただお互いのフレーズ確認用にプリプロとして録っただけだったんだけど、意外によく録れたからちゃんと歌乗せてみようって言い出して。突然ナベさんが(笑)。
奈部川:で、2曲ちゃんと歌ったの。『Star Soldier』と『Brass And Nickel』。
阿相:そうだ。『Brass And Nickel』のそのデモは、ラジオで一回だけ流したけど途中で切れちゃって。。
鳥居:マヤク(DJ MAYAKU)やらかしたよねー。
阿相:一番盛り上がる直前でCM入って(笑)。 たった一回しか流れないのにこだわって作った部分が全部カットされてた!(笑)。まぁ今思えば、最後まで聴けない感じも良かったんじゃないかって気もするけど。
奈部川:でもやられたときは相当むかついたけどね(笑)。『Star Soldier』に関しては、デモの段階で確信があったというか。去年の年末に、プリプロを録った段階で、これはすげー曲なんじゃないかって思ってて、で実際歌入れてみたら、「うわー、これとんでもねーや」って。で、俺はこの曲にチェロを入れたバージョンでイントロを「オッオッオッ オエーオ」から始まるようにしたいと思って、本番までそのアイデアは取っておいた。
阿相:デモの段階で十分いい曲でしたけどね。今回、SAXの小森君もチェロ弾いてくれた淳子ちゃんも本当にいいアレンジをしてくれて、それぞれの曲が想像以上に豪華になった。
『Star Soldier』はたしか曲中のギターのオブリがファミコンの『Star Soldier』みたいだから、曲名が決まって無い時にスタソル、スタソルって呼んでたんだよね?
奈部川:そう。プリプロ録ってた時はまだ通称スタソルだったんだけど、そのタイミングで健太くんの子供が産まれて。書きかけてた歌詞があったんだけど、全部書き直した。単純にポジティブで素直な歌詞が書きたくなったっていう。
阿相:『Star Soldier』って曲名はそのまま採用したと。
阿相:『Introduction』は元がLEF!!!(LEF!!! CREW!!!)のダブ曲じゃないですか(『LEF!!! DUB!!!』)。大元は同じだけど。ギターのアレンジとか変わってるよね?
池谷:本当に微妙だよね。
奈部川:じつはマーシーのベースが結構違うのよ。弾いてるところはほとんど同じなんだけど、音の符割りが違うというか。その印象は変えてるわけ。
金田:いや、あれは俺じゃなくて、たぶんギターです。
阿相:池谷のギターはだいぶ変わってる。
池谷:いや、そんな変えてないよ。たぶん弾く場所の絡み方とかくらい。
金田:リズムの乗せ方とかずいぶん変えたでしょ。
池谷:あー、ど頭のカッティングとか変えたわ。
奈部川:もともとはLEF!!!の3rd MIXTAPEの出囃子を作ってくださいってユウスケ(WSZ80)に頼まれて、そんな事言われたの初めてだったし、嬉しくてやってみようと思って。曲も1分半~2分の間でって言われて、そんな注文受けたのも初めてだったから楽しくて。で、彼らの事を歌って。でも、本当は逆なの。レゲエのサウンドシステムにおける、そのサウンドシステムのことを歌う曲(ダブプレート)は、もともと原曲があって、それのバージョン違いで、そのサウンドシステムのことを歌うの。なんだけど、俺たちは原曲なしで、いきなりこっちから作ったの。で、本当はこの2つがないと成立しないの。こっちだけが特別っていうのはなくて、大元の曲があって、それの歌詞を直したのがダブになって。でも俺らは逆からやったわけ。で、俺はアルバムで、この曲を入れなくてもいいかなと思ったんだけど、『LEF!!! DUB!!!』に対するひとつの完成をやりたかったから、今回のCDでやった。
これをわかってくれる人って少ないんだけど、やりたかった。あと、『LEF!!! DUB!!!』はLEF!!!のことを歌ったから、今度は俺たちのことを歌いたかった。阿相くんも入れて。
阿相:ATATAの出囃子的な感じですよね。俺の事まで書かれていてビックリしましたよ。それと配信版の『Ontologie』の始まりも良いですよねー。
奈部川:そう、あの『Ontologie』の始まり方もやりたかったから。
阿相:アンプのハウリング音が突然ギャーって始まって、ナベさんの声がぶっ壊れたラジオみたいな感じでノイズで入ってくる、そんでいきなり曲が始まるっていうナベさんのアイデアがあって。あれもうまくいきましたよね。
奈部川:両方試したかった。俺の語りで『Ontologie』って言って始まるバージョンもやりたかったし、『Introduction』が終わったあとに、ぶつっと切れていきなり『Ontologie』が始まるっていうパターンもやりたかった。
奈部川:レコードでは『Minority Fight Song』の始まりに阿相くんがイタズラをしてて、ちょっと違うんだよね。
阿相:あ、それはデンカが送ってくれたスタジオの練習テイクを、勝手に遊びで入れてしまって。面白いからみんなに聴かせて。俺はそっちのほうが好きだったりするんで採用されて嬉しいす。
奈部川:もともとあれでやってたからね。
池谷:ライブバージョンみたいな感じだよね。
阿相:いつかライブでもあのバージョンでやってくれるの?
池谷:いくらでもやりますよ。
奈部川:俺、八食来るまで、アナログバージョンの方の音源を聴いてて、八食でいつものあの始まりだったからビックリしちゃった(笑)。
阿相:『Brass And Nickel』って、STERUSSが入ってるバージョンあるじゃないですか。あれはどの段階でSTERUSSを呼ぼうって思ったんですか?
奈部川:あれはねー、今思えば結局無理な話だったんだけど、一昨年の年末にBELAMA2が俺の職場に入ってきて、知り合って仲良くなって。年が明けて、4月に企画やるからSTERUSS出てくれって言ったら、STERUSSはDJ KAZZ-Kが仕事継がなきゃいけないから難しいって言ってて。そのとき、BELAMA2も仕事辞めるって言ってたから、「じゃ分かった。せっかく出会ったんだから一個カタチにしようよ」って、ライブをやるか音源作るかって言ってさ。最初俺は、音源の方をやろうって言ってたの。実は配信用に、GHQじゃなくて、『Brass And Nickel』を録ろうと思ってた。そういう話をしてたんだけど、STERUSSがもう止まっちゃうかもしれないってなって。じゃあライブをやろうと。STERUSSを止めたくなかったの、俺は。ライブをやっていけばいいと思って、ライブ用のDJとか、サポートメンバーみたいに続けてるバンドもいるんだから、それでいいじゃんっつって。オリジナルメンバーにこだわらなくてもいいじゃんって言って。そんでライブが決まったの。で、STERUSSと一緒にライブはやるようになったけど、結局音源は作れなかった。だから今回のレコーディングでは絶対STERUSSとやるんだって決めてたんだ。でも、STERUSSのバージョンもやりたいけど、もともとSTERUSSのいないバージョンで作ってたから、そっちのバージョンもやりたい。だから2バージョン必要だなと思って。そんな感じ。
阿相:ミックスが超大変でした!(笑)。
鳥居:くそ長いしね(笑)。
奈部川:阿相くんは大変だったと思うよ。技術的なことを言えば、もともとSTERUSSが入ってない『Brass And Nickel』を録って、あとからSTERUSSがラップを入れるであろうところの演奏を録って、それをもともとあったところに広げて入れて、さらに俺のボーカルも足したりして。それを繋げてって。その作業はものすごい。
阿相:あれが一番苦労しましたよねー。結局STERUSSバージョンは1曲を6分割してミックスして最終的に繋げる、みたいな事やってました。何度も細かい部分をやり直して、最後は気が狂いそうだった(笑)。
奈部川:だけど、なんだろうな。過去、今までいろんなロックバンドとラッパーがコラボしたけども、ここまで交わった例ってないと思う。どこか分離しちゃうし、ラップとロックって、相性がいいようで悪かったりするから。実は。
阿相:あ、そこは一番気を使ったかもっす。曲中でラップが浮かないようにしなきゃだし、歌ものぽくするのも違うし。自然な流れで聴けるようにバランスとるのが難しかった。そもそもリズム感が違いますもんね。だから乗せるのも難しいし。
奈部川:もともとラッパーがいるバンドとかだったらいいんだけど。純粋なロックバンドと純粋なラッパーが合わさるのは結構難しかったりして。
阿相:それはありますね。
奈部川:歌詞については、俺がまず原型(『Brass And Nickel』の歌詞)をあいつらに渡して、こっから連想してくれって。で、もともとレコーディング入る前に、去年の4月の俺たちの企画に初めてSTERUSSが出たときに、『Brass And Nickel』をやったんだけど、その時は歌詞がないから、あいつらは『ワンバース』って曲の歌詞をそのまま乗っけたわけ。で、今回俺が歌詞書いて投げて、あいつら最初まったく違う歌詞を書いてきたの。なんだけど、やっぱり後半の「悩んでも見つからないなら~」の部分は、あれじゃないとダメな気がするんですよってBELAMA2が言ってきて、「じゃ分かった、そのまんま行こう」って。だから後半は『ワンバース』の歌詞のまんまなの。でも実はこれって、これにもヒップホップルールっていうのがあって、何かっていうと、ヒップホップって客演で呼ばれたときは、わざと自分のオリジナルの曲の歌詞を入れたりするの。『LEF!!! DUB!!!』もそうけど、ヒップホップのルールを忠実に守りながらも、プラスアルファの面白いことができたっていうか。あいつらの9月に出るアルバムに『ワンバース』のオリジナルがあるんだけど、歌詞一緒だけど、印象全く違うし、良くなったと思うよ。
阿相:あれは良かったっすね。
奈部川:まぁプレーヤーとしては、それぞれどのバージョンがいいとか、どのテイクがいいとかあると思うの。ざっくりしたこと言っちゃうけど、ATATAの結成以来、ずっと変化球ばっかり投げてきたの。カーブばっかり。なんだけど、俺はファーストアルバムだけはストレートにちゃんとやりたかったの。クリックも使って、ちゃんとそれぞれが分かれて録りたかったの。
阿相:『Fury Of The Year』とか、デモ録ってる当時も、本当はクリックに合わせて、ちゃんとした曲として出したいけど、それよりもその時の衝動を大事にしようって話してましたもんね。ユルかった雰囲気が今思えば良かったのかも。
奈部川:だからこそ、アルバムはしっかりやりたかった。たとえば無料配信の曲の方が好きですって言われることも覚悟で。
阿相:もちろん、無料配信のデモの方が良かったって言われることも、それはそれでATATAの良さだし、アルバムはアルバムで、同じ曲録ってもまたその向き合い方が違うから印象も違う。テイク違いを両方楽しんで欲しいす。
奈部川:無料配信のデモだって、ずっとATATAのサイトに置いてあるわけで、どっちがいいかじゃなくて、好きな方を聴いてくれればいい。
阿相:まあ作ったメンバーは一緒ですからね。どっちも。
阿相:あ、時間なくなってきたんでそろそろまとめたいんですけど、最後に一言ずつなんかコメントしてもらってもいいすか?
池谷:そういうの一番いらないでしょ?(笑)
阿相:そうっすね(笑)。ぜひアルバム聴いてください!
奈部川:ライブで会いましょう!
ATATA is...
Mitsuyoshi Nabekawa (Vocals) ex.BANDWAGON
Tatsuhito Ikeya (Guitars) ex.HOLSTEIN
Dai Torii (Guitars) ex.HOLSTEIN, RetromaniA
Masashi Kaneda (Bass) ex.HOLSTEIN, ex.MIRROR
Kenta Iwata (Keybords) ex.SWEEF
Taisuke Okura (Drums) nenem, ex.3cm tour